2007/07/29

子どもの本だより 62号

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 子どもの本だより

                 2007/07/29     no.62
                      <発行部数 808>
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 白黒とカラーの画面を交互に配することで、その発色の美しさは
際立ちます。底抜けに明るいカラーページの画面は世界の広さと奥
行きを感じさせ、ふと窓から覗いた風景が、この絵本の舞台、風車
とチューリップの国に繋がってしまっているようです。私にとって
は旅心を刺激する一冊でもあるのですが――。

                        (吉田真澄)

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『うんがにおちたうし』
               フィリス・クラシロフスキー 作
                    ピーター・スピア 絵
                    みなみもと ちか 訳
                          ポプラ社
                    定価 1260円(税込)

 異国を旅した時いつも、「空が違う」と感じます。自然光の中で、
その国の空気とにおいに触れながら見上げる空の青さ広さ深さ――
それは最初に出会う異国情緒でもあります。
 この絵本を開いて運河の上に広がるセルリアンブルーの空を見る
たび、私はそのことを思い出すのです。スピア特有の美しい水彩画
は、舞台となるオランダの風と空気を爽やかに運んできます。パノ
ラマのように広がる田園風景、画面を横長に大きくとった構造のた
め、運河のゆったりとした流れからほとりに咲く小さな花々までま
んべんなく見渡せ、水辺に遊ぶ水鳥の羽音まで聞こえてきそうです。
 最初のカラーページには草原を駆ける主人公、牛のヘンドリカの
姿が描かれます。わかば色に輝く牧草はきっと美味しいに違いない
と感じますし、何よりヘンドリカ自身が幸せそうです。それなのに、
物語は「ヘンドリカは ふしあわせな うしでした」と始まります。
それは、


  夏じゅう ずっと 草を たべ
  冬じゅう ずっと 草を たべ、
  夏も 冬も、たべづくめでした。
  そして まいにち、おひゃくしょうの ホフストラおじさんに
  ミルクを しぼらせて あげました。
  ― 中略 ―
  ヘンドリカは おじさんが すきでした。おじさんをよろこば
  せて あげようと、いっしょうけんめい たべました。
  でも たのしくは なかったのです。


というわけでしたが、そうした不満を懐きつつも「まいにち まいに
ち たべて たべて、また たべて」いった結果、「ふとって ふとっ
て、またまた ふとって、からだを うごかすのも やっとに」なって
しまったのでした。そんなヘンドリカでしたから、自らの不注意で
運河に落ちてしまった時、自力で岸に上がることができなかったの
です――。
 ヘンドリカの愛らしく無邪気なふるまいは読者の笑いを誘い、彼
女の飼い主ホフストラおじさんを初めとする登場人物は皆、あたた
かく勤勉です。優れた画家の手により、単純なストーリーは美しく
彩色され、おおらかで品のいいユーモアが画面全体を包み込みます。
ヨーロッパ生まれの画家ならではの洗練、細部まで描きこむ細密さ、
しかし奇をてらわず、どこかクラシカルなにおい――。
 みなさんも、風車をゆらすオランダの風をどうか感じてみてくだ
さい。

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(編集後記)
 オランダの絵本や読み物がたくさん紹介されるようになりました
が、私にとってもこの『うんがにおちたうし』は最初にオランダと
意識した絵本の一冊。大好きです。
 絵を描いたピーター・スパイアー氏はピーター・スピアと表記さ
れていることが多い画家ですね。オランダ生まれのオランダ育ちの
画家スパイアー(スピア)氏はこの作品で初めて絵本を手がけたそ
うです。そして、この絵本の舞台になっている村から20マイルほど
離れた所に住んでいたので、「なつかしい場所をあれこれと思い出
しながら、たいへんたのしくこの本を描きました」という言葉が紹
介されていました。
                         (さかな)
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