子どもの本だより
2008/03/31 no.67
<発行部数 817>
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++◆
春の訪れと共に、今年も海の向こうの国々では、イースターを祝
う盛大な催しが開かれることでしょう。このイースターに活躍する
のがイースターバニーと呼ばれるうさぎたちで、美しく装飾された
卵(イースターエッグ)を子どもたちに配達する役割を担っていま
す。
真綿のような毛並みの愛らしいうさぎが家を訪ねてきてくれるな
んて、春には嬉しい出来事が幾つも起こるものなのですね。
(吉田真澄)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『ふわふわしっぽと小さな金のくつ』
デュ・ボウズ・ヘイワード 作
マージョリー・フラック 絵
羽島葉子 訳
Parco 出版
定価 1631円(税込)
イースターの前日の晩から世界中を廻り、子どもたちに美しいイ
ースターエッグを届けるイースターバニー。その大役を任されるの
は、選ばれし5匹の――心がやさしくて、足が速くて、おまけにと
ても賢い――うさぎたちです。
いなかうさぎの女の子ふわふわしっぽは、このイースターバニー
に選ばれることを幼い頃から夢見ていました。りっぱな体躯を持つ
まわりのうさぎたちは、この小さな女の子の夢を笑い飛ばしました
が、ふわふわしっぽはきっぱりと言い放ちます。
「いまにわかるわ!」
物語に興を添えるのは、主人公が結婚し母親となった後に、かつ
て懐いていた壮大な夢を叶えていくことになるという展開です。快
適な住まいをしつらえ、生きるために必要なことを子どもたちに教
えるという母親の仕事こそ、最も重要で尚且つ手間隙のかかる作業
であることはいうまでもありませんが、それを真っ当に評価する絵
本が数多くある一方で、母親本人の自己実現を賞賛したものはあま
り見られないのではないでしょうか。
その責任感と愛情深い人柄をかわれたふわふわしっぽは、最も大
切な仕事を一任されます。それは、雪と氷に覆われた険しい山の頂
に住む、病気で寝たきりの男の子にイースターエッグを届けるとい
うものでした。3つの山を越えても、まだたどりつけないその場所
へと、全力で急ぐふわふわしっぽ。しかし、最後の難関であるそそ
り立つ山を目の前にして、力尽きてしまいそうです……。
前半では、パステルカラーの色彩で春の華やぎを伝えていた画面
は、物語の後半で一転、墨色と青みがかったブルーの月夜へと変わ
ります。銀色に輝く新月の冴えた美しさ、白み始めた曙の空を染め
ていくサーモンピンク、その暖かなピンクと雪の冷えた白がみせる
幻想的なコントラスト。ふくらみはじめたりんごの花の蕾は、瑞々
しくたおやかで、夜明けと共にすぐにでも花開きそうです。マージ
ョリー・フラックが描く絵の力により、物語のスケールは格段に拡
がったといえるのではないでしょうか。加えて、この画家が描くう
さぎはとても愛らしい口元をしていて、瞳はつやつやと濡れたよう
です。
大きな仕事をやり遂げたふわふわしっぽは、子どもたちの待つ家
へと急ぐのですが、この場面から、またやわらかなパステルを基調
とした画面に戻り、母親であるふわふわしっぽの日常が無事に戻っ
てきたのだとわかります。子どもたちは、お母さんが留守の間も、
しつけられたそれぞれの役目をきちんと果たしていたので、家の中
はすっきり片付いていたのでした。
明解なテーマ、健全なる主人公、そして愛らしい絵――子どもの
本としては無敵な強さを誇る絵本だといえます。さらに、今回、こ
の画家のデッサンの正確さと配色の美しさには、改めて感心した私
です。カバー全体を覆うサーモンピンクは、ふわふわしっぽが来て
いるワンピースの色であり、物語のクライマックスで空を彩る曙色
でもあります。母親として前向きに生きながら、幼い頃の夢を諦め
ない強さをも兼ね備えた主人公。その人生を暖かく応援する溌剌た
るサーモンピンクだと感じました。
-------------------------------------------------------------
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
★★ お知らせ ★★
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
― 吉田真澄さんの講演録「楽しみの質をみきわめた読書」―
講演録冊子の入手は絵本の店「星の子」さんへ。
http://homepage2.nifty.com/hoshinoko/
▼冊子の御案内ページはこちら
1冊300円。送料実費でお送りします。
http://www.litrans.net/maplestreet/kodomo/info/order.htm
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。<゜)))彡
(編集後記)
“母親本人の自己実現を賞賛したもの”――確かにそういう絵本は
すぐに思いつきません。この絵本はサーモンピンクがあまりにも愛
らしく、最初はどんな感じの絵本なのかしらとページを開いた時の
ことをよく覚えています。色合いから想像する甘さとは違い、なん
ともキリリとした内容にびっくりし、子どもと一緒に読むようにな
ってから一段と好きになった絵本です。
(さかな)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~